🌿 第1話 🌿
ある日、リオンとクリンは村長から呼び出されました。
「リオン、クリン。最近、村々でいろいろな問題が起きておるのじゃ」 村長は深いしわの刻まれた顔で、静かにそう語ります。

「争いもあれば、心の迷いもある。けれど本当は、自然とつながり、大地の教えを思い出せば解けるはずなのじゃ。そこで、お前たちに旅をしてきてもらいたい。森や川や山をめぐり、人々にその教えを伝えてくるのじゃ」
リオンはちょっと不安そうにクリンを見ました。 けれどクリンはにっこり笑って、「リオンと一緒なら、きっと大丈夫!」と胸を張ります。
こうして、ふたりの小さな旅が始まったのです。
ーー旅の始まりーー
一番初めの村は 広い広い草原の真ん中にありました。 シャイアン族の村です。 空はどこまでも青く、風に揺れる草は緑のじゅうたんのよう。けれど、リオンとクリンが足を踏み入れたとき、その村にはどこか重たい空気が流れていました。
畑のそばには大人たちが集まり、声を荒げています。 「もう三度目だぞ」 「きっと誰かがわざとやっているんだ」
見ると、畑は荒らされ、引きちぎられた野菜の葉が地面に散らばっています。
村人のブランキーは、隣の家のシンディをにらみつけました。
「こないだのケンカの仕返しだろう!」
「な、何ですって!あなたのほうこそ怪しいわ!」
疑いの言葉が飛び交い、村には険しい空気が流れていきます。
⸻ 原因を突き止めようと
その夜、リオンとクリンは畑のかたすみに身をひそめました。 月の光が畑を照らし、冷たい風が草原を抜けていきます。 クリンは小さな体をリオンの上着に寄せました。 「なにか……来る」
やがて、土がもこもこと盛りあがり、何かが 出てきました。モグラ達です。
「……あれが、畑を荒らしていた犯人?」 クリンが小声でつぶやくと、リオンは目を細めて首を振りました。
「いや……もっと奥に、強い気配がある」
リオンは静かに目を閉じ、地面に手を当てました。 「コウモリの精霊よ、力を貸して」
リオンの手のひらから、目には見えない超音波が土の中へと流れ込んでいきます。 音は地中を駆け抜け、岩や根にぶつかりながら反響し、やがて深いところから重々しい気配を押し返してきました。
――ごごごごっ!
大地が大きく盛りあがり、たまらず飛び出してきたのは、子牛ほどもある巨大なモグラ。 巨大モグラは興奮して、目が血走っていました。
「わわっ、で、でっかい!!」
クリンは目を丸くして叫びました。
けれどリオンは落ち着いたまま、一歩前へ踏み出しました。
警戒している巨大モグラに、リオンがそっと近づき、手をかざし会話を初めました。 「僕らは友達だ。怖くないよ。」
すると、巨大モグラは リオンの心に話しかけてきました。 「どんどん人間達が私達の住んでいるところに 入ってきて、食べものがなくなってきたんだ」 開拓で住むところを奪われ、食べ物がなくなり、生きる為に仕方なくやったと。
クリンは
「そうだったんだね……」とつぶやき
巨大モグラに手を当てました。
アライグマのクリンは不思議な力を
持っており、荒れた心を洗い浄化する
能力があった。
クリンに触られた巨大モグラは次第に
穏やかな表情に変わり落ち着きを取り戻した。
リオンはモグラを自由にし、モグラはリオンを見つめてから、土の中へと帰っていきました。
すると他のモグラたちも次々と土に潜り、姿を消していったのです。
⸻ リオンは明け方を待ち この様子を村人達に説明した。
犯人はモグラ達であった事。しかし モグラ達も追い詰められていた事。 これからは 必要以上に開墾しないように 動物達と共存をしていく事。
ブランキーはシンディに歩み寄り、深く頭を下げました。 「ごめんなさい。何も考えずに疑ってしまって」 シンディも顔を赤らめ、「私こそ……」と答えます。
二人の間にあったわだかまりは、すっと消えていきました。
⸻
村人たちはリオンとクリンに、食べ物や毛布を手渡し、感謝の気持ちを伝えました。
老族長は二人の手を取り、静かに言いました。
「あなたたちの勇気と優しさは、わたしたちに大切なことを思い出させてくれた。 ――心の目を開けば、見えない真実が見えてくるのだ、と」
この言葉はやがて村の宝となり、親から子へ、子から孫へと、ずっと語り継がれていきました。