リオンとクリンは、険しい山に囲まれたオジブワ族の村へ向かっていた。
夜もすっかり更け、あたり一面は深い霧に覆われている。
最近、この村では不思議な出来事が続いていた。
行き慣れた道で迷ったり、保存食が忽然と消えたり――まるで神隠しだ。 村人たちは祟りを恐れ、夜は外出を控えるようになっていた。
二人も霧に惑わされ、道を見失いかけたその時。 「リオンか? 遅いので心配になり迎えに来たぞ」
声をかけてきたのはオジブワ族の長老だった。
「ありがとう! もうほとんど迷子だった!」クリンが胸をなで下ろす。
「助かりました」リオンも深く頭を下げた。
「この辺りは今、物騒だ。さあ、早く村へ戻ろう」 長老に導かれ、二人はようやく山の奥にある長老の家へたどり着いた。
ただそこは村人のいない長老だけの家だった。
リオン「村人はどこですか?」
長老「んっ?…あぁ、あの、少し先の豊な大地に移動したのじゃ」
クリン「そんな話は聞いてないけどなぁ。」
リオン「夜の祈りはみんなでしないのですか?」
長老「えっ…、あっ、今日はみんな都合が悪い見たいで、無しにしたんじゃ」
クリン「そんな事ある?」
長老「ま、まぁ、今日は疲れただろう。は、早く休むとよい」
長老を見つめるリオン。 「……長老、その尻尾は、なんですか?」

いつの間にか村長のお尻からふさふさとした尾が揺れ、耳も尖っていく。
「キツネだ!」クリンが叫んだ。
「バレたか。」
淡い光を放ち、甘く妖しい香りが漂う。 霧はさらに濃くなり、リオンたちの視界を惑わせる。
そして正体をあらわした。
キツネ「お前たちは生かしておけない!」
クリン「何を!えーい!」 クリンが飛びかかったが 通り抜けてしまった。
クリン「?」
「クリン!これは妖術だ! 惑わされるな!」リオンが叫ぶ。
リオンは深く息を吸い、胸に手を当てた。
「フクロウの精霊よ、僕に力を! 真実の目を!」
「オウルビジョン!」 暗闇を見通すフクロウの目が、リオンの瞳に宿る。
「見えているのはただの幻……本当の姿は、そこだ!」
リオンが地面の小石をつまみ、キツネとは逆の方向へ投げつけた。
「イテッ!」
キツネの巨体は一瞬でかき消え、霧も風も静まった。
小石を投げた先にはクリンよりも小さな赤いキツネがいた。
「お前だったのか!」
クリンは心を澄ませ、やさしい光でキツネを包んだ。 キツネ「いたずらはもうやめるよ」
――夜が明け、二人はようやく本物のオジブワ族の村へたどり着いた。
「……今度こそ、本当の長老ですよね?」
長老「何の事じゃ?」
リオンはキツネに騙されていた事を話し、 これまでの村の出来事もキツネのしわざだったと 説明した。
それからは不思議な事もおこらなくなったとか。 この出来事は、村人たちにも大切な教えを残した。
【オジブワ族の教え】
知恵で学び、愛で支え、
尊敬をもって自然と人を敬い、
勇気をもって困難に立ち向かい、
正直に自分を語り、
謙虚に自らを自然の一部と知り、
そのすべてを守ることで真実に至る。
「この七つを心に宿せば、
どんな妖の幻にも惑わされることはない。」
