リオンとクリンがアパッチ族の村を訪れると、人々が広場に集まり、悲壮な面持ちで話し合っていた。
村長が深くため息をつく。「…どうしたものか。」
「何でこんな事に…」村人はうつむき、女性の泣き声が静かに響く。
リオンが心配そうに近づく。「どうかなさいましたか?」 村長はゆっくりと顔を上げゆっくり話した。
「…この村は周りが荒地のため、作物が育たぬ。だから隣村と毛皮や織物と食料を交換しておったんじゃが、」と語り始めた。
「しかしこの前の大雨で、隣村との唯一の山道が崖崩れに遭い、通れなくなってしもうたんじゃ。」
別の村人が付け加える。「他の道を行くには、険しい山を大きく回り込まねばならぬ。三里(十二キロ)は軽く超える遠道じゃ…」
村長はうつむく。「我らは、これからどうしたらいいのじゃろうか…」
クリン「ひぇー、食べ物がないのー!」とうろたえる。

リオンは眉をひそめ、「…それは、本当に困りましたね」と呟く。
やがて夜になり、焚き火の炎も消え、村人たちが疲れ果てて寝静まる。
しかし、リオンだけは星空を見上げながら起きていた。

「何か、いい方法がないものか…」 クリンはテントで毛布にくるまって「ガガー…💤」と幸せな寝息を立てている。
夜明け前、リオンは一人で村外れの丘に登った。東の空がほのかに白み始める。山の向こう側で一羽のトンビが優雅に輪を描いて飛んでいる。

そこへ、息せき切ってクリンが駆け上がってくる。「リオン!ここにいたのか!心配したぞ!」
リオンは振り返り、朝日を背にして輝く笑顔を見せる。
「ああ、クリン。見てくれ、あのトンビを」 クリン「え?トンビがどうしたの?」
リオン「食料がある証拠だ。きっとあの方角に村があるんだ。よし、やろう!」
クリン「えっ?何を?」
リオン「橋を作るんだよ!あの村へと続く希望の橋を!」
クリン「えーっ!この深い谷のある崖と崖に!?」
目を丸くする。
リオンはすぐに村長のもとへいき、計画を伝えた。 村長は大きく仰天する。 「なんてことを!あの崖と崖の間は相当離れておる!谷底も深い!橋などかけられるわけがなかろう!」
周りに集まった村人たちも首を振る。「槍も弓矢も届かぬ!無理じゃ!無理に決まっておる!」
リオン「槍も弓矢もいらないんです」
リオンはいたって平静だ。そして地面に枝で図を描きながら説明を始めた。
「まず、崖にある頑丈な木に、縄を結んで谷底へ垂らす。 反対崖も同じようにして縄を結んで谷底まで垂らす。 そして、谷底で両方の縄を結び、両崖からみんなで力を合わせて、その結んだロープを一気に引き上げる。 そうすれば、谷の上に張り詰めた太いロープの道ができるでしょう?あとはそれを何本かはり、床板を渡せば、立派な吊り橋の完成です!」
村長「それは可能なのか?」
村人「でも村長、あの崖に橋が出来れば、今までよりも隣村が近くなるぞ!」
村長「大丈夫かのう…」
クリン「迷っていても始まらないよ」
村人「そうだよ!方法があるなら
全力でやってみよう!」
別の村人が叫ぶ。「ひとを集めるぞ!やろう!」
悲しみに暮れていた村に、久々に活気が満ち始めた。
村を挙げての橋作りが始まった。
朝日が登り、日が暮れるまで。雨の日も風の日も、村人たちは心を一つにして働いた。

最初は難しそうにしていた作業も、 リオンの掛け声とクリンの応援で、村人は弱音をはくことも無く頑張った。
ついに両岸から引き上げられた太い縄で吊り橋が完成した。
「やったー! 繋がったぞ!」クリンが跳び上がって喜ぶ。
「やったー!」リオンも村人たちも歓声を上げ、抱き合って喜んだ。
まずは体重の軽いクリンが橋を渡る。 クリンは恐る恐る橋の中央まで歩んでいった。 「クリン!大丈夫かー」リオンが叫ぶ。
クリンが橋の中央で振り返り、飛び跳ねながら
「大丈夫だよー」
その瞬間、大きな拍手と歓声が谷間にこだました。
村長は、涙をぬぐいながら言った。「…これで、我々は救われた。リオン、クリン、お前たちには…本当に感謝しておる。」
リオンは照れくさそうに笑い
「よし、これは僕からのささやかなお祝いです!」
リオンは胸に手を広げ、静かに呟く。
「蝶の精霊よ、僕に力を。バタフライ・フラワー!」
その言葉とともに、
無数の光の蝶がリオンの周りに舞い始め、蝶が舞った跡には、カラフルで可憐な花が一面に咲き乱れた。
荒れ地だった村が、一瞬にして花畑に変わったのだ。村人たちは、その美しい光景に歓声をあげた。
アパッチ族には古来より、こういう教えがある。
『口で雷鳴のように騒ぐより、手に稲妻を持つ方がよい』
――つまり、「あれこれ言い訳をするより、まずは行動せよ」という意味だ。
この出来事が教えの源を作ったのかもしれない。
