リオンがトリンギット族の村へ向かう山道を歩いていると、遠くから悲鳴が聞こえた。
商人「助けてくれー!」
リオン「どうしたんですか!」
リオンが駆け寄ると、ひとりの男が振り向きざま舌打ちをし、森へ走り去った。
商人「お金と荷を奪われるところでした…」
リオン「ケガはありませんか? 村まで一緒に行きましょう」
商人「ありがとうございます」
リオンとクリンは商人を守りながら、村へ急いだ。
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村では、ちょうど収穫祭の準備が進んでいた。
村長「遅かったのう。祭のご馳走に使う食材を待っておったのじゃ」
商人「それが、道中で山賊に襲われまして……」
村長「なに? 山賊だと!」
(しばし黙考)
「……そやつ、頬に大きな傷がなかったか?」
商人「はい、たしかに目立つ傷が」
村長は深くうなずき、低い声で言った。
村長「そいつはビリー。――わしの息子じゃ」
クリン「ええっ、あの男が?」
村長「ああ……」
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村長は語りはじめた。
若き日のビリーは、ある冬の日、村に現れた神の使いとされるオオカミを倒してしまった。 部族には「オオカミを殺した者は追放する」という古い掟がある。 その戦いで頬に大きな傷を負い、ビリーは村を去り、 やがて山で暮らしながら時折商人を襲うと噂されるようになった――。
村長「……ともあれ、今日は収穫祭じゃ。 準備を急ごう」
リオン「僕たちも手伝います!」
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太鼓の音が響き、収穫祭が始まった。 村人たちが踊り、歌い、火が揺れる。
その時――森から大きなクマが現れた。
食べ物の匂いに誘われてきたのだ。
村人「クマだー」
みんな一目散に逃げる
村長は火のついた長い棒を手に、人々をかばいながら立ちはだかる。

危険を察知したリオンは 素早く精霊に祈りを捧げる。 「バッファローの力よ、我に勇気を!」 気迫の一撃でクマを攻撃する
だがさすが生態系のトップに君臨するクマ。
びくともしない。
そして再びクマはゆっくり村長に近づき、ついに飛びかかってきた。
鋭い爪が閃く――。
リオン「危ない!」その瞬間、一本の槍が唸りをあげて飛び、クマを横切った。

クリン「なにっ?」
皆が振り向くと、そこには――ビリーが立っていた。
村人「ビリーだ!」
ビリーは叫んだ。
「父さん!」 ビリーは
倒れた村長に駆け寄り、かばうように
槍を構えてクマと対峙した。
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クマはビリーの様子を伺いながら飛びつくチャンスを狙っている。
緊張の糸が張り詰めた-その時 クマはビリーに飛びかかった。
その瞬間に村長が火のついた棒を クマに投げつけた
顔に当たったクマは後づさりし、近くの川に足を踏み入れた。
リオンはその瞬間を見逃さなかった。
「電気ウナギの精霊よ――力を貸してくれ!」

水は電気をよく通す。 川面が青白く光り、稲妻のような衝撃がクマを打った。
始めて受ける衝撃に、たまらず
クマは森へと逃げ去っていった。
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一瞬の静寂。 ビリーは倒れた父を抱き起こした。 村長はゆっくりと目を開け、かすかに微笑む。
村長「……戻ってきてくれたのか、ビリー」
そこへ、一人の母と娘が駆け寄った。 彼女たちは告白した。
――あの日、ビリーがオオカミを討ったのは、自分たちを救うためだった、と。
そしてこの母娘が同罪になる事を避ける為、
ビリーはこの事を誰にも話してはならないと
告げた事を
村長は息子の肩を強く抱いた。
その夜、村はビリーを再び家族として迎え入れた。
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リオン「さあ、収穫祭の続きを!」
リオンが笛を吹くと、クリンが踊り出す。
村人たちも再び太鼓を打ち鳴らし、炎の周りに歓声が広がった。

のちに山賊は別人が捕まって裁きを受けた。
山賊の容疑も晴れたビリーは 村を導く立派な後継者となるのである。
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トリンギット族の教え
「たとえ道を違えても、
血の絆は大地より深い。
赦しと勇気が、
未来を照らす光となる。」
